APACC取得者3人に聞いた勉強法と症例のコツ|病院も薬局もリアル公開

この記事でわかること
  • APACC(認定)とBPACC(専門)の違いと2階建て構造
  • 病院2人+薬局1人、計3人のAPACC取得者が使った参考書・勉強法
  • 症例提出で実際に苦労したポイントと対策
  • 調剤薬局からAPACCを取得したリアルな体験談
  • APACC取得後の月給・業務変化と、BPACCへのキャリアパス

「外来がん治療認定薬剤師(APACC)って、実際どうやって取るの?」

がん領域に興味がある薬剤師なら、一度は気になる資格だと思います。でも、ネット上のAPACC情報って要件をなぞっただけのものが多くて、「実際に取った人がどう勉強したか」「症例でどう躓いたか」を本音で書いた記事はほとんど見当たりません。

そこで今回、現役のAPACC取得者3人にアンケートと取材で詳しくお話を聞きました。しかも3人の所属はバラバラ。病院からは2人、そして調剤薬局から1人

「APACCは病院薬剤師だけの資格」と思っている方には、新しい発見があるはずです。

私自身は大学病院でレジデントを3年経験し、外来化学療法室もローテーションしましたが、APACCは取得していません。だからこそ「これから目指す人」と同じ目線で、3人に突っ込んで聞けたと思っています。

この記事を書いた人
  • 大学病院レジデント3年→地域中核病院→調剤薬局
  • 現在は調剤薬局で管理薬剤師として勤務
  • 5社以上の転職エージェントを利用
  • がん領域の認定資格に興味があり、現役取得者3名に取材
  • 詳しい運営者情報は「こちら」

       てつん

目次

APACCとBPACCの違い|「認定」と「専門」の2階建て

まず最初に、APACCとBPACCの関係を整理しておきます。結論から言うと、「認定」と「専門」の2階建て構造です。

  • APACC(外来がん治療認定薬剤師):入門〜中級レベルの認定資格
  • BPACC(外来がん治療専門薬剤師):APACC取得後に目指す上位資格

APACCはBPACCの前提資格なので、最終的にBPACCを目指す場合でも、まずはAPACCからスタートします。

APACC vs BPACC 早見表

項目APACC(認定)BPACC(専門)
正式名称外来がん治療認定薬剤師外来がん治療専門薬剤師
位置づけ入門〜中級上位資格(Board-certified)
実務経験3年以上5年以上
必須前提JASPO正会員+生涯研修認定薬剤師APACC保有または合格
研修がん領域60単位以上がん診療病院連携研修修了
症例10例提出書類審査ベース
試験あり(筆記+症例審査+面接)記載なし
出典:日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)公式サイト 2026年5月時点
てつん

「とりあえずAPACCから」というのが王道ルートです。
BPACCの存在を知ってから始めると、キャリアの全体像が見えやすくなります。

今回お話を聞いた3人のAPACC取得者

今回、現役のAPACC取得者3名にアンケートと取材で詳しくお話を聞きました。同じ資格でも、所属も動機も取得後の変化もまるで違います。3人並列で読んでいただくと「自分はどのタイプに近いかな?」という参考になるはずです。

3人の取得者プロフィール
  • Aさん(30代・病院薬剤師):所属施設で過去にAPACC取得実績がない中でチャレンジ。がん専門薬剤師を目指して奮闘中
  • Bさん(30代後半・病院薬剤師):中規模急性期病院に所属。APACC取得後、BPACCにもステップアップ済み
  • Cさん(30代前半・調剤薬局薬剤師):薬局内で初めてAPACCを取得。専門医療機関連携薬局に興味があり挑戦
APACC取得者3人のプロフィール比較。Aさん(病院・施設初)、Bさん(病院・BPACC取得済み)、Cさん(調剤薬局・薬局初)

病院薬剤師2人に加えて、調剤薬局から取得したCさんの存在が今回の記事の大きなポイントです。「APACCは病院の資格」と思い込んでいる方にとって、Cさんの体験談は新しい視点になるはずです。

APACCを目指したきっかけ|3人の動機

3人の動機を聞いてみると、共通点と違いの両方が見えてきました。

共通していた動機

  • 症例10例で取れる手軽さ:がん専門薬剤師(50症例)より圧倒的にハードルが低い
  • 自分のスキルアップ:3人全員が「自己研鑽」を理由に挙げた

それぞれの「もう一つの理由」

面白いのが、3人それぞれに「自分ならでは」の動機があったことです。

  • Aさん:「目標がないと頑張れないタイプ。資格という目標があった方が覚えようとする気が起きる」
  • Bさん:「加算が取れて病院の利益になる。将来調剤薬局でも更新可能なのも後押しになった」
  • Cさん:「専門医療機関連携薬局に興味があった。薬局として外来がんに関わるなら、まず自分が資格を持っておきたかった」

Cさんの動機は特に注目です。2021年にスタートした「専門医療機関連携薬局」の認定制度と絡めて、薬局薬剤師としてAPACCを取る意味が出てきています。

病院だけの資格だった時代から、明らかに状況が変わりつつあります。

APACC取得までの3ステップ

APACC取得までの流れは大きく3つのステップに分かれます。

STEP
前提条件を整える

申請には次の条件を満たす必要があります。

  • 薬剤師実務経験3年以上
  • JASPO(日本臨床腫瘍薬学会)の正会員であること
  • 生涯研修認定薬剤師の資格を保有していること
  • がん領域の講習・研修を60単位以上履修

「生涯研修認定薬剤師」は別途取得が必要なので、まずはここから準備する人が多いです。

STEP
症例10例を提出する

外来がん患者サポートの事例を10例提出します。

3人の中でも症例提出で苦労した人は複数いて、この部分がAPACCの最大の山場と言えそうです。詳しくは後述します。

STEP
認定試験(筆記+症例審査+面接)

試験は3つのパートに分かれています。

  • 筆記試験(CBT形式):幅広い知識が問われる
  • 症例審査:提出した症例の妥当性が審査される
  • 面接:症例についての質疑応答

3人とも筆記試験は1回目で合格しています。しっかり対策すれば手の届く試験です。

※詳細な申請条件・提出書類はJASPO公式サイト(APACCについて)で必ず最新情報を確認してください。

試験勉強のリアル|3人の参考書と学習スタイル

3人が試験対策で使った参考書を並べてみると、共通して使っている本と、人によって分かれる本がはっきり見えてきます。

3人の参考書比較

参考書・教材Aさん(病院)Bさん(病院)Cさん(薬局)
がん必須ポイント◎(イチオシ)
がん化学療法レジメン管理マニュアル
製薬会社の適正使用ガイド◎(イチオシ)
JASPO Essential Seminar Neo◎(イチオシ)◎(必須と回答)
がんがみえる
添付文書◎(全薬剤DL)

3人全員が使っていたのが「がん必須ポイント」と「Essential Seminar Neo」。この2つはAPACC受験の鉄板教材と言えそうです。一方、イチオシは3人とも違うのが面白いところです。

JASPO Essential Seminar Neoは必須レベル

3人とも受講済みで、BさんとCさんは「試験対策で必須」と明言しています。Bさんは「分野ごとにまとまっていて、試験で出そうなところがなんとなくわかる」とコメント。Cさんも「セミナーから試験に出る内容が多いので、しっかり受講して書き込みを何度も復習した」と回答しています。

Aさんは「受けなくても試験は受けられるけど、受けた方が絶対いい」という立場。ただし費用が約1万8,000円かかるのがネックとのこと。

てつん

3人全員が受講+活用しているので、Essential Seminar Neoは事実上の必修と考えて良さそうです。
オンデマンド形式なので、育児中や勤務が忙しい方でも自分のペースで視聴できます。

3人の学習スタイルの違い

面白いのが、合格した3人全員の学習スタイルが違うことです。

  • Aさん:「書いて覚える派」 — 自分でノートに治療ガイドラインを書いて整理。症例から頭に入るタイプで、患者さんとの出会いをきっかけに掘り下げる
  • Bさん:「1冊に集約して反復する派」 — 1つの教材に情報を集約して、繰り返し読む。堅実な積み上げ型
  • Cさん:「完璧な一冊を作る派」 — がん必須ポイントは改訂前で古かったため、新しい内容(新薬)も含めて余白にひたすら書き込み。さらに添付文書を全部タブレットにダウンロードして、マーカーで重要部分を引き、覚えるまで何度も見た
APACC試験の勉強法比較。書いて覚える派、1冊集約反復派、完璧な一冊を作る派の3タイプ

タイプは違っても、3人とも合格しています。「自分に合ったやり方」を見つけることが大切で、勉強法に正解は一つじゃないということですね。

勉強期間と1日あたりの時間

3人に共通していたのは、試験半年以上前から本腰を入れ始めていること。1日あたりの勉強時間はBさんが1〜2時間、Cさんが2〜3時間と回答しています。Aさんは「3ヶ月前からガッツでやった」と短期集中型ですが、日々の症例から学ぶ姿勢は半年以上前から継続していました。

症例提出の落とし穴|3人が語る苦労と対策

APACCで多くの受験者がつまずくのが、実は試験よりも症例提出です。今回の3人の中でも、Cさんは症例審査で一度不合格を経験しています。

Cさんの症例審査:薬局からの挑戦ゆえの苦労

Cさんは調剤薬局で初めてのAPACC挑戦者でした。周囲にAPACC取得者がおらず、症例の書き方を相談できる人がいない状況からのスタートです。

Cさんが症例で苦労した点として挙げたのが、「実際にはガイドライン通りにはいかない場合があり、書き方に悩んだ」ということ。2回目の症例審査では「ガイドライン通りでなくても、面接で理由を説明できればよい」という方針に切り替えて合格しています。

てつん

「ガイドライン通りじゃなくても、理由が説明できればOK」。
これは薬局で症例を書く人にとって、かなり心強い情報ですよね。

Bさんからのアドバイス:細部が命

Bさんは症例審査1回目で合格していますが、症例提出で注意すべき点を具体的に教えてくれました。

  • 誤字脱字で減点される:地味だけど超重要。提出前に第三者にチェックしてもらうのがおすすめ
  • エビデンスに基づいた症例を選ぶ:面接で質問されるので、根拠をしっかり説明できる症例が有利
  • 「思い出せる症例」を選ぶ:面接で質問された時に答えやすいのは、自分の印象に残っている患者さんの症例
  • 症例の書き方を最初にしっかり読む:書き始める前にフォーマットを理解しておくこと

症例の書き方には注意が必要

複数の取得者から聞こえてきたのが、「がん専門薬剤師の症例とは書き方のポイントが異なるかもしれない」という声です。がん専門薬剤師の経験者にレビューしてもらうのも参考になりますが、可能であればAPACC取得者にも見てもらう方が安心かもしれません。

特にCさんのように薬局で初めて挑戦する場合は、同じ施設に相談相手がいないケースが多いです。学会や研修会で繋がった他施設のAPACC取得者にレビューを依頼するのも一つの手段です。

調剤薬局からAPACCを取ったCさんの話

今回の記事で一番伝えたいのが、「APACCは病院薬剤師だけの資格じゃない」ということです。Cさんの体験がその何よりの証拠です。

薬局初のAPACC取得者として

Cさんは所属薬局でAPACCを取得した最初の薬剤師です。先例がない中での挑戦は、想像以上にハードだったはず。それでも挑んだ理由が「専門医療機関連携薬局に興味があった」という、薬局の将来を見据えた動機でした。

薬局ならではの苦労と工夫

薬局からAPACCを取る場合、病院と比べて症例を集めるハードルが高いのは事実です。Cさんの場合、症例審査で一度不合格を経験しています。しかし、2回目では「ガイドライン通りでなくても面接で説明できるように工夫した書き方」に切り替えて合格。

また、勉強面でもCさんならではの工夫がありました。添付文書を全薬剤タブレットにダウンロードし、マーカーで重要部分を引いて繰り返し確認する方法は、「いつでもどこでも学習できる」環境を作った好例です。

取得後に感じた変化

Cさんが取得後に感じた変化は、病院の2人とは少し異なります。

  • 門前病院から認識してもらえた:資格取得は必須ではないが、勉強会などで発言しやすくなった
  • 知識が深まり自信を持てた:「資格を活かしている実感はまだないけれど、自信を持てるようになったのが一番よかった」
  • 月給は+3,000〜5,000円程度:大きな額ではないが、施設としての評価につながる

特に「門前病院からの認識」は、薬局薬剤師にとって大きなメリットです。がん領域で病院と連携する際に、APACCの肩書きが信頼のベースラインになり得ます。

てつん

薬局からAPACCを取る人はまだ少数派。だからこそ「取った」という事実自体が、病院との連携で差別化になりますよね。

APACC取得後のリアル|月給・業務・キャリア

取得後の変化を3人分まとめると、月給よりも「業務の広がり」に価値を感じているのが共通していました。

月給の変化は施設によって大きく違う

取得者月給の変化
Aさん(病院)多少手当がついた
Bさん(病院)変化なし
Cさん(薬局)+月3,000〜5,000円程度

同じ資格を取っても施設によって対応が分かれるのが現実です。ただし、APACC取得者が在籍していることで施設としての加算取得が可能になるケースもあり、個人の手当以上に病院・薬局全体の利益に貢献できる側面があります。

業務範囲は確実に広がる

3人とも、取得後に業務内容や立ち位置に変化がありました。

  • Aさん:外来がん患者への関わりが深くなった
  • Bさん:レジメン委員会の事務局など、がんに関わる業務が増えた
  • Cさん:門前病院から認識され、勉強会での発言がしやすくなった

「資格取得は通過点」が3人の共通メッセージ

3人ともはっきり言っていたのが、「資格を取って終わりじゃダメ」という本音です。

Aさんは「取ったという結果より、その過程が一番大事」。Bさんは「新薬や適応追加が多く、日々研鑽しなければ医師からの問い合わせに対応できない」。Cさんは「実務に活かしてこそ。新しいことを学び続けることが重要」。

言い回しは違っても、本質は同じです。資格は自分への投資のスタート地点であって、ゴールではない

BPACCへの道|Bさんが実際に歩んだキャリアパス

APACCの先にあるBPACC(外来がん治療専門薬剤師)。今回の3人の中で、Bさんは実際にこのルートを歩んでいます。「APACCを取得後、病院勤務のため申請してBPACCになった」とのことです。

BPACCになるための条件(2026年5月時点)

JASPO公式情報によると、BPACC新規申請の主な条件は以下の通りです。

  • APACC認定者であること、またはAPACC認定試験に合格していること
  • 薬剤師実務経験5年以上(名簿登録から5年経過+所属施設長による証明)
  • がん診療病院連携研修を修了していること、または同等の認証を受けていること
  • JASPO会費未納でないこと

「がん診療病院連携研修」は修了証発行に約2ヶ月かかるので、申請時期を逆算して早めに動くのがポイントです。

APACC→BPACCのキャリアパス

STEP
薬剤師として実務経験を積む(3年)

がん領域の業務に関わりつつ、JASPO正会員として研修60単位+生涯研修認定を取得。

STEP
APACC取得

症例10例提出+認定試験(筆記・症例審査・面接)に合格。

STEP
実務経験5年到達+研修修了

がん診療病院連携研修を修了して、BPACC申請の前提を整える。

STEP
BPACC新規申請

書類審査ベースでの申請。Bさんはこのルートで実際にBPACCを取得しています。

※BPACC暫定認定制度は2024年3月で終了済みです。今から目指す方は新規申請ルートを取ることになります。詳細はJASPO公式 BPACC新規申請手続で必ず最新情報を確認してください。

資格取得を目指すなら|環境の選び方も大事

ここまで読んで「APACCを目指したい」と思った方に、もう一つ大切な視点をお伝えします。

3人からのメッセージ

  • Aさん:「目標があるとガッツでやれるタイプには本当におすすめ。取得という結果以上に、その過程で得た知識が一番の財産」
  • Bさん:「がんに興味があるなら比較的取りやすい資格だからチャレンジあるのみ! 仕事の幅を広げることができ、昇任にも有利になる」
  • Cさん:「資格取得は大変な上、資格自体を活かしている実感はまだないけれど、知識が深まって自信を持てるようになったのが一番よかった

症例を集めやすい環境を選ぶ

APACCは病院からでも薬局からでも取れます。ただし、症例10例を集める難易度は環境によって大きく変わるのが現実です。

  • 病院薬剤師:外来化学療法室に関われる環境なら、症例は比較的集めやすい
  • 薬局薬剤師:外来がん患者が多い門前薬局や、病院との連携が強い薬局を選ぶのがポイント

もし「がん領域に興味があるけど、今の職場では症例が集めにくい」という方は、外来化学療法に力を入れている病院や、がん専門病院の門前薬局への転職も選択肢です。

まとめ|APACCは病院も薬局も、がんに関わる薬剤師の第一歩

この記事のまとめ
  • APACCは「認定」、BPACCは「専門」の2階建て構造
  • APACC取得は症例10例+試験(筆記・症例審査・面接)
  • JASPO Essential Seminar Neoは3人とも受講。事実上の必修レベル
  • 症例提出が最大の山場。薬局からの挑戦でも合格は可能
  • 月給アップは施設次第だが、業務の幅は確実に広がる
  • APACCは病院だけの資格じゃない。薬局薬剤師にも道がある

資格は通過点。
取得後の研鑽とキャリア展開こそが本番。

3人の取得者に共通していたのは、「資格は取って終わりじゃない」という実感でした。APACCもBPACCも、取った後の自分をどう作るかが一番大切です。

そして今回の取材で強く感じたのは、APACCは「病院だけの資格」ではなくなりつつあるということ。Cさんのように調剤薬局から取得する薬剤師が出てきている事実は、これからのがん領域における薬局の役割拡大を象徴していると思います。

がんに関わる薬剤師としてキャリアを築きたい方にとって、APACCはその第一歩として最適な選択肢の一つです。

※本記事は2026年5月時点の日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)公式情報および現役APACC取得者3名への独自取材に基づきます。資格制度・試験内容は変更される可能性があるため、最新情報はJASPO公式サイト(https://jaspo-oncology.org/)でご確認ください。記事中の参考書・セミナー・キャリア情報は個人の経験に基づくおすすめであり、効果を保証するものではありません。本記事に登場するA・B・Cさんは仮名で、個人特定を避けるため一部表現を抽象化しています。

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