- がん化学療法を勉強するための参考書5冊の特徴と使い分け
- 現役APACC取得者3人が「実際に使った本」のリアルな評価
- 本を買う前にできる無料の勉強法(適正使用ガイド・添付文書の活用術)
- 初学者・APACC受験者・薬局薬剤師、目的別のおすすめ組み合わせ
「がん化学療法の勉強を始めたいけど、何の本から読めばいいかわからない」
がん領域に関わる薬剤師なら、一度はぶつかる壁だと思います。書店に行けばがん関連の書籍は山のようにあるし、ネットで調べてもおすすめがバラバラ。
そこで今回は、外来がん治療認定薬剤師(APACC)を取得した現役薬剤師3人に、実際に使った参考書を聞きました。病院2人+薬局1人という構成で、「がん化学療法の勉強全般」に使える本を厳選しています。
私自身もレジデント時代に外来化学療法室をローテーションし、今回紹介する本のうち何冊かは実際に使っていました。「確かに現場で使えるな」という実感を持って書いています。
がん化学療法の参考書は「目的で選ぶ」のが正解
がん化学療法の参考書は「目的に合わせて段階的に揃える」が正解
今回取材した3人の中で、同じ本をイチオシに挙げた人はいませんでした。立場も学習スタイルも違うので、合う本が違って当然です。
| 目的 | おすすめの本・教材 |
|---|---|
| まず全体像を掴みたい | がんがみえる |
| 治療のポイントを押さえたい | がん必須ポイント |
| 現場ですぐ使える実践本が欲しい | がん化学療法レジメン管理マニュアル |
| 辞書的に深掘りしたい | 臨床腫瘍薬学 |
| ガイドラインを簡潔に理解したい | がん診療レジメントマニュアル |
| お金をかけずに始めたい | 適正使用ガイド+添付文書(無料) |
この記事では、3人が実際に使った本を1冊ずつ紹介しつつ、書籍以外の「無料で使える教材」もあわせて解説します。
まず1冊なら|がん必須ポイント
3人の取得者に参考書を聞いたとき、全員が名前を挙げた唯一の本がこの『がん必須ポイント』でした。
- Aさん(病院):「イチオシ。字とレジメンだけの本だけど、治療のポイントを押さえてる」
- Bさん(病院):メイン教材の一つとして使用
- Cさん(薬局):改訂前で古い部分があったため、新薬情報を余白にひたすら書き込んで「自分だけの最新版」に仕上げた
各がん種の治療レジメンと押さえるべきポイントがコンパクトにまとまっているのが特徴です。写真や図は少なく文字中心ですが、「治療の要点だけ知りたい」というニーズにダイレクトに応えてくれます。
Aさんは「フィルターの要否や投与速度など、調製に必要な情報も載っている」と話していました。病院で調製業務に関わる薬剤師には、手元ですぐ確認できる実用書です。
Cさんの「余白に書き込んで自分だけの1冊を作る」という使い方は、改訂が追いつかない部分を自分で補完する工夫として、他の参考書にも応用できますね。
てつん「まず何か1冊」と聞かれたら、3人全員が使っているこの本が一番外れがないです。
ただし初学者がいきなり読むと文字だけで辛いかも。あとで紹介する「がんがみえる」で全体像を掴んでからの方がスムーズです。
現場で毎日開く本|がん化学療法レジメン管理マニュアル
私がレジデント時代に外来化学療法室をローテーションしていたとき、一番手に取る頻度が高かったのがこの本です。
薬剤師向けに、薬剤師目線で書かれているのが最大の特徴。治療の中止基準や減量基準、副作用の発現時期、抗がん剤調製のポイントなど、現場で「今すぐ確認したい」情報が1冊にまとまっています。
- 中止基準・減量基準:医師への疑義照会や処方提案に直結する情報
- 副作用の発現時期:患者指導の前に「いつ頃何が出やすいか」を確認できる
- 調製のポイント:溶解液の種類やフィルターの要否など
- 相互作用:併用注意の薬剤が整理されている
Aさんも「患者に指導する前にレジメンを確認するとき使う」と話していました。Bさんも取得後の現場で日常的に開く本として真っ先に挙げています。
「試験勉強のための本」というより、「現場で使いながら知識が定着していく本」です。外来化学療法に関わる薬剤師なら、勉強用と実務用を兼ねて持っておいて損はありません。



私もレジデント時代にこの本をよく開いてました。
副作用の発現時期が書いてあるのが特に助かるんですよね。患者さんへの指導前に「この副作用は投与後○日目に出やすい」と確認できると、説明の説得力が全然違います。
イメージで理解したいなら|がんがみえる
「がん化学療法の勉強を始めたいけど、そもそも各がん種の治療の流れが頭に入っていない」。そんな人にまず手に取ってほしいのが『がんがみえる』です。
Aさんが勉強を始めた順番が印象的でした。
この学習の流れは理にかなっています。いきなり文字中心の本を読んでも、治療の全体像が頭にないと情報の「置き場所」がない状態になってしまいます。
『がんがみえる』で先にフレームワークを作っておくと、その後の知識が格段に定着しやすくなります。「病態がみえる」シリーズを学生時代に使った薬剤師なら、あの読みやすさの延長線で学べるのもメリットです。



がん領域に初めて触れる人は、ここからスタートするのが一番挫折しにくいです。
ただしこの本だけではAPACCの試験対策には足りないので、「入口の1冊」として使ってください。
辞書的に深掘りするなら|臨床腫瘍薬学&がん診療レジメントマニュアル
- がん化学療法を体系的に学びたい
- APACCなどの認定試験を見据えている
- 基礎固めの1冊目はすでに持っている
臨床腫瘍薬学(JASPO公式テキスト)
日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)が出版している、いわばがん領域の薬剤師にとっての「公式教科書」です。
Aさんいわく「めちゃめちゃ細かい。分厚い。辞書的な感じで使っていく本」。普段使いというよりは、わからないことが出てきたときに引く辞書としてのポジションです。
APACC資格を運営するJASPO自身が出版しているので、「この本を網羅すれば試験範囲はカバーできる」という安心感があります。ただし1冊目にこれを選ぶと、ボリュームに圧倒される可能性大です。
がん診療レジメントマニュアル
各がん種の治療ガイドラインが、簡略化されてわかりやすくまとまった本です。Aさんは「ざっくり理解して、細かいところはガイドラインや『がん必須ポイント』で補う」使い方をしていました。
ガイドラインそのものは高額で分量も膨大です。この本なら主要ながん種の治療の流れ(ファーストライン→セカンドライン→…)を一望できます。



『臨床腫瘍薬学』は、どちらかと言えば辞書的に使う本です。
まずは『がん必須ポイント』や『レジデントマニュアル』で基礎を固めてから手を出す方が効率的ですね。
ちなみに、外来がん治療認定薬剤師(APACC)という資格に興味がある方は、3人の取得者に勉強法・症例提出のコツまで詳しく聞いた記事があるので、あわせて読んでみてください。


本を買う前にできること|無料教材+セミナー活用術
ここまで参考書を紹介してきましたが、実は3人全員が「本と同じくらい、あるいはそれ以上に使った」と語る無料の教材があります。
製薬会社の適正使用ガイド
Aさんは「結局、適正使用ガイドが一番見るかもしれない」と話していました。Cさんに至ってはイチオシ教材として挙げています。
適正使用ガイドとは、製薬会社が各抗がん剤ごとに作成している資料のこと。投与方法・用量調節・副作用管理・患者指導のポイントが1つの薬剤について詳しくまとまっています。
- 無料:製薬会社のWebサイトからダウンロードできる
- 実践的:副作用のグレード別対応など、現場で直接使える情報
- 最新:新薬が出ればその都度作成されるので、参考書より情報が新しい
Aさんの言葉が本質をついています。「本に書いてある内容は、結局は適正使用ガイドの情報がわかりやすくまとまったもの」。つまり適正使用ガイドは情報の一次ソースに近い存在です。
Bさんも取得後の日常業務で「適正使用ガイドとレジメンハンドブック」を一番使うと回答しています。参考書を買う前にまず適正使用ガイドを読み込むのが、最もコスパの良い勉強法です。
添付文書を「教材化」する方法
薬局からAPACCに合格したCさんの勉強法は独特でした。
抗がん剤の添付文書を全薬剤タブレットにダウンロードし、マーカーで重要部分を引いて、覚えるまで何度も繰り返し読んだとのこと。
添付文書はそのまま読むと無味乾燥な情報の羅列です。でもCさんのように「重要部分をマーキングして反復する」使い方をすれば、立派な教材に変わります。
- PMDAの医薬品情報検索から無料でダウンロード可能
- タブレットに入れておけば、いつでもどこでも勉強できる
- 試験で問われる「用法用量」「禁忌」「相互作用」は添付文書がそのまま根拠になる
特に薬局薬剤師の場合、病院のように院内DIシステムが使えないケースも多いはず。タブレットに添付文書を揃えておく方法は、環境に依存しない勉強環境を作れる点でも優れています。
JASPO Essential Seminar Neoは事実上の必修
無料ではありませんが(受講料:約1万8,000円)、3人全員が受講している教材も紹介しておきます。
日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)が毎年開催するEssential Seminar Neo。がん領域の要点が分野ごとにまとまったオンデマンド形式のセミナーです。
- Bさん:「分野ごとにまとまっていて、試験で出そうなところがなんとなくわかる」
- Cさん:「セミナーから試験に出る内容が多い。しっかり受講して書き込みを何度も復習した」
- Aさん:「受けなくても試験は受けられるけど、受けた方が絶対いい。取得後も毎年自己研鑽として受けている」
APACCを目指す人には事実上の必修です。ただAPACC受験を考えていなくても、がん化学療法の知識をアップデートしたい薬剤師には十分価値があります。
オンデマンド形式なので、育児中や勤務が忙しい方でも自分のペースで視聴できます。



お金をかけずに始めるなら「適正使用ガイド+添付文書」、もう一歩踏み込むなら「Essential Seminar Neo」。
本を買う前にこの3つを押さえるだけでも、かなりの知識がつきます。
目的別おすすめ組み合わせ3パターン
読者の目的別に「この順番で揃えるといい」という組み合わせを3パターン紹介します。3人の取材結果と私自身の経験から整理しました。
パターンA:がん化学療法の基礎を固めたい人
「外来化学療法に関わり始めた」「がん領域は初めて」という薬剤師向け。Aさんの学習順序がそのままモデルになります。
各がん種の病態・治療の流れを図で掴む。ここで「地図」を作る。
STEP1で作った地図に、レジメンや治療ポイントの詳細を書き込んでいく。
実際の患者対応で使うことで、知識が「使える状態」に昇華する。
パターンB:APACC受験を見据えて揃えたい人
外来がん治療認定薬剤師(APACC)の取得を考えている薬剤師向け。試験対策を意識した組み合わせです。
3人全員が使った鉄板。Cさんのように余白に書き込んで「自分だけの1冊」にするのが効果的。
3人全員が受講。Bさん・Cさんは「試験対策で必須」と明言。ここから掘り下げて勉強するのが王道ルート。
JASPO公式テキスト。全範囲を通読する必要はなく、わからない部分を辞書的に引く使い方でOK。
APACCの勉強法や症例提出のコツについては、取得者3人に詳しく聞いた別記事で解説しています。


パターンC:薬局で外来がん患者に対応したい人
調剤薬局で外来がん患者の服薬指導に関わる薬剤師向け。Cさん(薬局からAPACCを取得)の勉強法がモデルです。
門前病院で処方頻度の高い抗がん剤から、適正使用ガイドと添付文書を集める。タブレットにダウンロードしておけば、投薬前にすぐ確認できる。
個別の薬剤知識を、レジメン単位で体系化する。副作用の発現時期や中止基準を押さえることで、処方元の医師との連携もスムーズになる。
門前以外のがん種にも視野を広げたくなったら。余白に自分のメモを書き込んで、薬局目線の情報を追加していく。



薬局からのスタートなら、まずはお金をかけずに適正使用ガイドから始めるのが現実的です。
Cさんも「適正使用ガイドが一番役に立った」と言っていたので、薬局薬剤師との相性は抜群ですね。
まとめ|がん化学療法の参考書選びは「段階的に揃える」が正解
- まず1冊なら『がん必須ポイント』(3人全員が使用した鉄板)
- 現場で毎日使うなら『がん化学療法レジメン管理マニュアル』(薬剤師目線で書かれた実践書)
- 初学者は『がんがみえる』で全体像を掴んでから参考書に進むとスムーズ
- 本を買う前に「適正使用ガイド+添付文書」で無料の勉強環境を作れる
- APACC受験を考えるならEssential Seminar Neoは事実上の必修
- 目的に合わせて「段階的に揃える」のが最もコスパが良い
参考書は「全部買う」より「目的に合わせて段階的に」。
3人の取得者に共通していたのは、「1冊で完結する万能な本はない」ということ。自分の目的と今のレベルに合った本を選んで、段階的にステップアップしていくのが最も効率的です。
まずは1冊手に取ること、あるいは適正使用ガイドをダウンロードすること。小さな一歩から始めてみてください。
がん領域のキャリアを考えている方は、環境選びも大切です。外来化学療法に力を入れている病院や、がん専門病院の門前薬局など、症例を積める環境なら勉強効率も上がります。



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※本記事はAPACC取得者3名への独自取材(2026年5月実施)および筆者の実務経験に基づきます。参考書の内容・価格は変更される可能性があるため、最新情報は各出版社・書店でご確認ください。記事中の参考書・セミナーは個人の経験に基づくおすすめであり、効果を保証するものではありません。本記事にはAmazonアソシエイトリンクが含まれています。


