薬剤師は過剰?飽和?給料は下がる?現役薬剤師が薬剤師の未来を真剣に考えてみた

 

こんにちは!薬剤師ブロガーのてつんです。今回は薬剤師の未来について記事にしていきたいと思います。「薬剤師が飽和するって本当?」「娘(息子)を薬剤師にしたいけどどうなのかしら?」「薬剤師って儲かるんじゃないの?」といった疑問にお答えするとともに、私てつんが考える薬剤師の未来について語っていきたいと思います!

それでは張り切っていきましょう!

目次

薬剤師の需要供給バランスは大きく崩れはじめている

2045年には2万4000人の薬剤師が過剰になる

○:人口減少を考慮し薬剤部入学者を少なく見積もった場合の薬剤師数

●:このまま人口減少も考慮しなかった場合の薬剤師数

△:現時点で薬剤師の必要数

▲:今後薬剤師の需要が高まると仮定した場合の必要数

薬剤師2020年2045年変動要因
需要32万人33.2万人機械的推計
32万人40.8万人職能の向上による需要の上昇を考慮
供給32.5万人45.8万人毎年一定数の増加
32.5万人43.2万人今後の学生数減少を考慮
厚生労働省 薬剤師の需給推計から抜粋

厚生労働省は2021年4月「第8回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開催し、2045年までの薬剤師の需要推計案を公表しています。資料によると、今後2045年には少なく見積もっても2万4000人の薬剤師が過剰になるという衝撃的な結果でした。

薬剤師の中でも病院薬剤師は病棟業務の充実など求められる役割が増えてきており、薬剤師の需要は増加しています。しかし、人口減少によって病院へ入院する患者が減少することも予想されるため大きな需要の増加には結びつきません。

一方薬局薬剤師は今までの「薬を調剤して渡すだけ」の仕事から在宅業務、対人業務へシフトしてきており、薬を調剤する(棚から必要な数の薬を取り揃える)という仕事は薬剤師ではなくてもできる仕事として変化してきています。

結果としてこのまま今までと同じように薬剤師が誕生していくと、需要と供給のバランスが大きく崩れることになります。

つまり今後薬剤師は今まで以上に「薬のスペシャリスト」として専門性が試されているのです。

薬剤師の飽和は薬科大学の入学数増加が大きな要因

薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 参考資料2

薬剤師が飽和してきている大きな要因が薬科大学の増加と定員数の増加です。

H15年を契機に私立の薬科大が増え入学定員も右肩上がりです。今後の人口減少を考えると、薬剤師ばかり増えて治療する患者がいないという未来が見えますね。

このような背景から厚生労働省の開催した「第8回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」において

薬学部・薬科大の入学定員を抑制しようとする動きが出ており、薬剤師の過剰供給を防ごうと動き出しました。

てつん

厚生労働省は薬学部・薬科大の入学者を減らすことで薬剤師の需要供給バランスを改善しようとしているんだね。

今後どんどん難しくなる薬剤師国家試験、学生の35%が国試浪人に・・・

さらに薬剤師の過剰を抑制しようと厚生労働省が考え出した一つの案が「薬剤師国家試験を難しくしよう」ということです。

2020年度 国家試験受験者数合格者数合格率
医師9910人9058人91.4%
看護師66124人59769人90.4%
薬剤師14031人9634人68.7%
2020年度業種別国家試験合格率

医師や看護師の国家試験合格率は毎年約90%に近い水準を推移していることを考えると、今のままでも十分薬剤師国家試験は難関なのかがわかります。

厚生労働省は薬剤師国家試験をさらに難化させ、薬剤師を抑制しようと考えています。

具体的には今まで薬剤師国家試験の合格基準は全問題の65%である225点以上獲得することでしたが、第106回以降の薬剤師国家試験では合格率を65%へするように調整していくようになりました。

例え自分の正解率90%でも、他の受験者も成績が良くもし上位65%に入ることができなければ合格しません!!!

つまり合格のボーダーラインが毎回変化し、上位65%しか合格しない相対評価制度へ変更となったのです。言い換えれば毎年国家試験を受ける35%の学生が薬剤師免許を取れずに国家資格浪人となりうるのです。

現在求められる薬剤師は「量より質」へ変化しています。入学者を抑制し、国家試験を難化させることによって少数精鋭の薬剤師部隊を作り上げようとしているのです。

さらに薬剤師国家試験の合格率は大学によって大きく異なっています。

つまり大学選びが学生の未来を変えるといっても過言ではありません。これから薬剤師を目指して大学を受験する学生にとって、薬剤師国家試験は最後の大きな壁です。この壁を乗り越えるためにまず大学選びから検討していく必要があります。以下の記事も参考にしてください。

てつん

薬剤師国家試験の難化は質の高い薬剤師を養成するためにも必要なことと厚生労働省は考えているんだね。

薬剤師卒後臨床研修の義務化 〜大学卒業しても続く研修〜

「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」の中では質の高い薬剤師を養成するために薬剤師卒後研修制度の法的位置付けを求める声も出てきています。

薬剤師も研修医のように大学卒業後の臨床研修を義務化する検討がされている

卒後研修については質の高い薬剤師の養成に切っても切れない関係があります。例えば大学卒業後にそのまま調剤薬局へ就職した薬剤師は、注射薬の知識が実務実習止まりとなってしまいます。

そこで2002年に北里大学北里研究所病院が始めた制度が「薬剤師レジデント制度」です。卒後研修という位置づけで新卒の薬剤師を採用し、薬剤師業務の全般を研修することで薬剤師のレベル向上を目指していく制度です。レジデント制度については以下の記事も参考にしてください。

現時点でレジデントは義務化されておらず、自ら志願することで研修を受けることができます。しかし今後は全新卒薬剤師にレジデントのような卒後研修制度が導入される未来は避けられないかもしれません。

てつん

厚生労働省は病院で行われている治療や注射薬がわからない薬剤師が地域の薬局で働くことは「質の低下」につながるのではないかと考えているんだ。

嫁様

それなら皆病院に就職すればいいじゃない。なんで新卒は薬局に就職したがるのかしら?

てつん

いい質問だね。実は病院よりも薬局の方が初任給が高いことが多く、奨学金を抱える学生の中には給料を理由に病院を選択できない学生も増えてきているんだ。

まとめ:薬剤師の未来はどうなる?給料は?

薬剤師の業務は日々増え続けているが、需要過多のため給料格差が生じると予想

病院薬剤師はこれまで薬剤部のみに常駐していた薬剤師が今ではベットサイドで患者に説明を行い、医師や看護師、コメディカルと連携しながら医療を進めていく「医療チーム」の一員として地位が確立し始めてきています。

薬局薬剤師も在宅訪問やオンライン服薬指導、地域連携薬局、病院と薬局との薬薬連携の強化等より地域に根付いた薬局が求められ、クリニックのみならず総合病院とも連携を取り合って医療を進めていくことが求められています。

しかしこのままでは業務量が増えても薬剤師数も増えていくため、薬剤師の低賃金化へつながっていくと考えられます。薬剤師の賃金が低下するということは実はすでに始まってきています。

薬局薬剤師の年収も年々低下し、薬科大学が多い都市の薬剤師賃金低下はより顕著に表れています。賃金の低下は奨学金を返済できない薬剤師を増やすことになり、さらなる悪循環を生みます。

今後は薬剤師の中でも賃金格差が生まれる世界へと突入していきます。

認定薬剤師を積極的に獲得していくことや、管理薬剤師の経験を積むこと等、日々スキルアップを目指す薬剤師は評価され賃金も上がっていくかもしれません。一方で自己研鑽を怠っている薬剤師の需要は減っていき、その差はどんどん加速することが予想されます。今後薬剤師を目指す学生やその親は今薬剤師が置かれている現状についてしっかりと理解した上で大学選びから考えていく必要があります。

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